今回は 豊稔池ダム放水(上樋) のことを書いてみようと思います。
今年2020年は、ありとあらゆるイベントや行事が中止・延期となってしまったのですが、僕が中止の知らせを聞き、一番落胆したのは豊稔池のゆる抜きです。
5月くらいには、早々に四国新聞に掲載されていて、密集を避けるため中止です、という記事が出ていました。
僕はここ数年ゆる抜きを見に出かけているけれど、神事や放水の瞬間を除けば、それほど人がいるという感じでもないのですが、やはり行えば人は集まってしまいますよね。
まあ、仕方がないと言えばそうなのですが、満濃池に行き、ふと思ったのです。
「ゆる抜きしないと下流の方は困るのでは?」
一人で勝手に思いついて、一人で勝手に思い込むところから、今回はスタートです。
特にダムやゆる抜きに詳しいわけではありませんが、香川を代表する夏の風物詩、豊稔池ダム放水(ゆる抜きのようなもの)や、豊稔池ダムのことなんかに、もしご興味がおありでしたら、どうぞお読みください。
※追記2021年7月
毎年楽しみにしている豊稔池のゆる抜きですが、2021年(令和3年)のゆる抜きも中止となってしまいました。
2年連続の中止、残念ですが、また来年…。
豊稔池ゆる抜きについて 掲載日:2021年7月9日更新
豊稔池ゆる抜きについて – 観音寺市ホームページより引用
例年、7月下旬から8月上旬にかけて行っております豊稔池の「ゆる抜き行事」につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、今年度については、「中止」します。
豊稔池のゆる抜きはいつ頃?
豊稔池ダムでは、毎年夏にゆる抜きという放水行事が行われています。
豊稔池ゆる抜き [ほうねんいけゆるぬき]
豊稔池ゆる抜き | かんおんじ観光ガイド | 観音寺市観光協会 公式ホームページより引用
夏に行われる豊稔池のゆる抜き(放流)は、下流にある井関池の貯水量が3割を切ったころを目安に行われる季節の風物詩として知られる。ごう音とともに毎秒4トンもの水が放流される景色は壮観。
僕がはじめて豊稔池のゆる抜きを見に行ったのは、5年前の2015年です。
そこからしかわからないけれど、豊稔池のゆる抜きはこんな感じの日程で行われています。
- 2015年8月18日(火)10:00~
- 2016年8月9日(火)9:30~
- 2017年台風で井関池満水の為中止
- 2018年8月8日(水)10:00~
- 2019年8月27日(火)10:00~
まあ、その前の日程も調べたらあるのだろうけれど、最近の傾向はわかるかと思います。
まずここ5年は8月に行われています。
「ゆる抜きが7月~8月にかけて行われる」と説明されているサイトもあるので、僕は7月から観察を開始しているのですが、雨量や梅雨明けなんかの時期によって、少し変わるのかな、なんて思ったりしています。
また、お盆の時期や祝祭日は避けられていて、全て平日です。
曜日についても特徴があって「火曜日」か「水曜日」が多いです。
ゆる抜きには人出が要るだろうから、月曜日はいろいろ準備して、火曜日、水曜日の週半ばから放水をはじめ、週末には終える、というパターンなのかもしれませんね。
終わるところを見たことがないから、これは全て勝手な推測です。
ホームページや地元誌などでは、告知が一週間ほど前に行われていて、僕も毎回かんおんじ観光ガイドを参考にしています。
またほぼ毎日豊稔池ダムの情報を更新してくださっている豊稔池ダムファン倶楽部さんの投稿も、毎日チェックしていました。
僕が注目したは、まずこちらのお知らせ。
新型コロナウィルス感染症まん延防止の観点から、今年度の一般公開の「ゆる抜き」については中止となりました。ご観覧を予定していた皆さまには、ご理解・ご協力を頂きますようよろしくお願いいたします。また、堰堤や自然放水を観覧いただく際においても、人と人との間隔を十分確保いただき、密集・密接とならないようご配慮いただきますようお願いいたします。
かんおんじ観光ガイドより引用
なるほど、「ゆる抜きは中止ですが、堰堤や自然放水は密にならないように配慮してみてください」ということなのですね。
つまり、ゆる抜きの行事としてはやらないけれど、自然に放水することもあるかもよ、と僕は受け取りました。
そして、8/23のことでしたが、豊稔池ダムファン倶楽部さんの投稿で、
「井関池の水位が下がっています」
との情報が上がっていました。
ムムム、これは放水へのサインでは…。
もともと豊稔池ダムは下流の井関池の水量が3割を切った頃に行われるということなのですが、その当時の井関池は、底が見えるほどでした。
これはそろそろなのかも、と思い翌日の月曜日、8月24日豊稔池ダムへ行ってみることにしました。
豊稔池ダムの場所
では、豊稔池ダムへの、場所や行き方です。

豊稔池ダムは香川県の西端、観音寺市大野原町にあります。
もう少し西へ行けばすぐ愛媛との県境、高松からは車で約1時間半です。

いろいろ行き方はあるのだろうけれど、一般道では国道32号線、377号線を通るのが一番早いです。
高速だと20分くらい早く着きますが、大野原インターから少し戻るような道になります。

大野原町に萩原交差点という場所があって、そこにコンビニがあります。
一度ここで車を停めて、讃岐山脈を見てみます。
(他にはそんな人はいないけれど、何回もそうしているうちに「そうしなければいけない」気持ちになってくるものです)


ここから約4キロほど山の方へ行くと、豊稔池ダムがあります。
本当はこの先にある井関池も写真に撮ってから行けばよかったのですが、帰りになんて思ってしまい、帰りにはくたびれて撮れませんでした。
車からちらりと見た感じでは、池の底まで見えていて、僕が知っている井関池の様子とは随分違っていました。
この時点ではまだ放水されているかどうかはわからなかったので、この井関池の様子だと、放水が近いかなと思っていました。
豊稔池ダムの駐車場
豊稔池ダムへの道はひっそりとしていて、すれ違う車もいませんでした。
トイレのある道沿いの駐車場にも車は1台もありませんでしたが、そこに停め、ドアを開けます。
一瞬交差点とは違った涼しい空気を感じます。
少し標高も高いからかな、と思っていると、何やら「シャー」というような水の音も聞こえています。

いやまさか、水は出ていないよね、と遊歩道を行くと…

わあ、水が流れています。
例年のゆる抜きでは、奥の中樋、手前の上樋の両方から放水されているのですが、この時には上樋だけです。
しかし、結構勢いよく出ているのは、ゆる抜きの時と同じです。

自宅を出る時には、カラカラに乾いた豊稔池ダムも見たことないから、それでもいいやと思って出ましたが、やはり水の流れがあると嬉しくなります。
思わず、「やった!」と一人ガッツポーズ。

豊稔池はほぼ満水で、これなら十分に井関池を潤すことが出来そうです。

ゆる抜きの時には、係の方がここを行き来することがありますが、この日は誰もいませんでした。
ムムム、下を見ても誰もいないから、今豊稔池ダムには、僕一人。
これもはじめてのことです。
はやる気持ちを落ち着けながら、下の遊水公園へ降りて行きます。


僕はちょうどこの降り口を一度過ぎてから戻っているので、この方向からだとUターンする方向に豊稔池に続く下りの道があります。

ほとんどの方が車で下りて行くのだろうから、僕はあえて書くのだけれど、この豊稔池堰堤に下って行く坂道は、とても良いです。
毎回訪れるのは夏だから、主に蝉を中心とした虫の声が響き、風があれば木々のこすれる音、そして、その奥には水のせせらぎ。


山の上には木陰はないけれど、この道には少し日陰になるところがあって、その隙間から川を見下ろします。
ああ、水が流れていく、この流れが下流までいくのだなあと思うと、またそれが良いのです。

ちょうど坂を下りきったところで、バス専用の駐車場があります。
定期的な観音寺市の「のりあいバス五郷高室線」は上に停まるけれど(本数が少ないので注意)、ツアーなどでくる観光バスはここまでくるのでしょうね。

この駐車場に1台も車が停まっていないのを見るのも、もちろんはじめてです。
3台だけれど、橋の袂にある駐車場が一番近いです。

豊稔橋を渡って豊稔池遊水公園へ
駐車場から遊水公園へ行くには、豊稔橋という小さな橋を渡っていきます。
レンガのような四角いブロックを積み上げた、こちらも趣のある石橋です。

橋なので、もちろんこの下には川が流れていまして、ダムから放水された水がこの下を流れていきます。

僕はこれまで気が付かなったのですが、川の底にも石が敷き詰められていて、素敵な感じです。

ついついダム本体にばかり注目してしまうけれど、橋やその下の川岸の造りなんかも、なかなかよいところです。
僕は下りたことはないのですが、降りて行く階段もあるようです。
ちょっと岸辺を歩いたりできたら良いですよね。

豊稔池遊水公園の芝生広場です。
ああ、やはり誰もいませんでした。
一人占めできてうれしいという気持ちもあったけれど、いざ大きなダムの放水の前に立つと、少し孤独というか不安な気持ちにもなりました。(すぐに後から人はきました)
8月の下旬なので、陽ざしの影響か芝生はもうすっかり色あせてしまっているけれど、8月中旬くらいまでは青々と茂っていたようです。

誰もいないけれど、ゆる抜きはなかったけれど、水は上樋からだけれど、来て見ることができてよかったです。
中樋からの放水がこの日はなかったので、上樋に近づいて行くことができました。
豊稔池ダム放水(上樋)
中樋と呼ばれる放水口から出た水は、一度中ほどにあるプールのようなところに溜まって、その後斜面を滝のように流れているように見えます。


水受けのような場所、きっと名前があるのだろうけれど、よくわかりません。

斜面にも草が生えていまして、きっと昨日まではここに水が流れるなんて想像していなかったという感じで揺れていました。

放水がなければ、階段を下りて行けますが、水がある時は行けません。

実は中樋から放水があると、この辺りも水の流れがあってその構造は僕も見られませんでした。
なるほど、こんな感じになっていたのですね。

中樋からは水の流れはなくて、こちらはじっくりその様子を観察できます。
ゆる抜きであれば、ここは水飛沫が飛び交い、しばらくいるとびしょ濡れになってしまう場所です。


中樋の前には随分時間が経ったと思われる水がそのままになっていて、その造りがよくわかりました。
底面は緩やかに傾斜があるのですね。

少し歩いて移動していると、後ろから橋を渡って別の方が来ました。
いやあ、誰もいなかったので、少し安心です。

なんてことのない豊稔池ダムの写真に見えますが、上樋だけ放水されるのは、井関池と豊稔池の水量を調節する時だけだろうから、なかなか貴重な気がします。
実際に、この数日後中樋からも放水が始まったので、「上樋だけ放水」というのは1~2日しかなかったことになります。


昨年2019年は雨の中でゆる抜きが行われたので、やはり青空の下で見る豊稔池ダムは気持ちがよかったです。
中樋から水が出ていないことをじっくり確認しながら、階段へ近づいてみます。

毎回思うのですが、少しだけ残った水に、小さなエビのような生き物がいて、乾燥しています。

階段を上がって中樋を眺めてみたいのですが、何分人が少なくて、どなたかおられれば構わないのですが、僕が先陣を切って見に行くという気持ちにはなれませんでした。(数日後中樋の放水の時にはじっくり見ました)

そのかわりにじっくり見たのが、この角度からの上樋です。
ダムの横から勢いよく出てくる白い水って、何だかずっと見ていても飽きません。


満濃池でも思ったことですが、青い空に佇む古い石積みの堰、そこから放たれる白い水が緑の中を行き、その音とマイナスイオンの飛沫に包まれる、この辺がゆる抜きの楽しいところじゃないかなと思います。
もちろん好みはあって、「山中のダムから水が出ている、何だそれだけか」と思う方もいるかもしれませんが、探していても、そんなにそういうところはないものです。

誰もいなかった遊水公園の駐車場にも、1台、また1台と車が停まるようになってきました。
たまたまはじめて訪れた方は、なんだ放水は一つだけか、なんて思うかもしれないけれど、夏の豊稔池では、今日はとてもラッキーですよ、と心の中でお伝えしました。
豊稔池ダムの上へ
もう見るべきものは大体見たし、帰ろうかとも思ったのですが、やっぱり水神社へお参りして行こうという気になります。
豊稔池ダムも、満濃池と並んでたくさんの石碑が置かれていますが、石碑の裏側に「豊稔池の沿革」があり、それを撮っていなかったので撮りました。

そのすぐ脇にある登り口から上へ向かいます。


山の中の小径という感じの上りですが、途中に草を刈っている場所があって、そこから堤体を間近に見ることが出来ます。

また目線が変わると、水の音なんかも違う風に聴こえてくるから、ここからの眺めもとても良いです。
しかし時期によっては虫(主に蚊)が結構いるので、十分注意してください。
上がりきると、少し広場のようになっていて、豊稔池碑と水神社が祀られています。
そして上流の方には、豊稔池が広がります。

ああ、この豊稔池の景色も、とても良いです。
もし足腰が悪くなくて、上に来るのが億劫でないならば、是非こちらまで上がってみてください。

水神社と呼ばれる小さな祠があって、ゆる抜きの時にはここで神事が行われるのでしょうね。
放水を見させてくれてありがとうございます、と豊稔池の神様にお礼を言います。
ダムの堤体の方を見ると、結構上の方まで水がきていました。


そこからは下の方を覗き込むこともできますが、やはり普段のゆる抜きとは違う感じでした。
しかし、下からではよくわからなかった草木の絡まり方なんかも、また趣があって良いですね。

僕が一番最初に上に行ったので、他の方の呼び水になってしまったのか、次々に上がって来られていました。

他の方の邪魔にならぬように、そっと道を下りていきます。
この時には、ああ今年はこれで豊稔池に来ることもないかな、と思っていました。
しかし、数日後に中樋からも放水が、と言われ再度行くことになりました。
もちろんこのままそのことを書き続けてもよいのですが、もし一つ区切りをつけるならここですね。
また次回に書きますので、よろしければご覧ください。
それでは、今日はこの辺で。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。