さて前回に続いて、 豊稔池ダム放水(中樋) です。
実際には、前回の上樋とあわせ、中樋からも放水されていたので、事実上のゆる抜きの状態になっているわけですが、2020年は中止とアナウンスしているので、「ゆる抜きのような」放水としておきます。
もう同じ場no所を二回続けて訪問し、二回も似たような記事を書くので、何が何だか、という気もしてきますが、井関池のことや、夏の青空の下に行われた豊稔池ダムの放水の様子について、もしご興味がおありでしたら、お読みください。
※追記2021年7月
毎年楽しみにしている豊稔池のゆる抜きですが、2021年(令和3年)のゆる抜きも中止となってしまいました。
2年連続の中止、残念ですが、また来年…。
豊稔池ゆる抜きについて 掲載日:2021年7月9日更新
例年、7月下旬から8月上旬にかけて行っております豊稔池の「ゆる抜き行事」につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、今年度については、「中止」します。
豊稔池ゆる抜きについて – 観音寺市ホームページより引用
井関池は満水に
月曜日に放水があるかも、と思って訪れた際には、井関池の写真を撮り忘れていました。
いや、正確に言うなら、「行き」は豊稔池へ行く気が早ってしまい、「帰り」は疲れて通り過ぎてしまった、というのが本当のところです。
そして、もう一つは、車を停める場所がないので、どうしようかな、という気持ちになるのですよね。
ちょっと中に入って行く道は狭いわりに車の交通量が多く、地元の方がどんどんやってくるので、邪魔になってもいけない気持ちになります。
しかしながら、この日は澄んだ青空と雲が入り混じる風の強い日だったので、一度井関池を覗いてみます。
わあ、ちょうど高屋神社のある観音寺の市街方面がくっきり見えました。
ここから眺めると観音寺市街が北側になります。
県道の両サイドには、田畑が広がっています。
大野原、大きな野原という地名がぴったり。
この地域の灌漑施設として、豊稔池、井関池は利用されているのですね。
全国有数のレタスなどの農業生産団地を形成する、豊かな実りを誇る観音寺市大野原町は、井関池が築かれ新田が開墾されるまで、想像もつかない荒地でした。ところが、「西嶋八兵衛」がこの広大な土地に着眼し、寛永 15 年(1638 年)に井関池の築造を開始し、これを引き継いだのが大野原開拓の父、豪商「平田与一左衛門」でした。
さぬきの水物語|かがわの農業農村整備より抜粋して引用
なるほど、西島八兵衛さんが最初に手がけた池なのですね。
美味しいお米やレタスを作っているのですね。
「ようこそ五郷の里へ」という看板の向こうに橋が架かっていて、その両サイドに池が広がっています。
8/24には、池の底が見えるほどでしたが、今回はどうでしょうか。
おお、驚くほど水量が増えています。
僕は大抵ゆる抜きが始まる頃に訪れることが多いので、こんな風に満水に近い井関池を見るのは、珍しいことです。恐らく2017年台風で満水だった以来。
行ったことがないのですが、対岸には五郷山公園というところがあって、桜やツツジが綺麗なのだそうです。行ってみたいと思いつつなかなか行けていないところ。
(この後近くへ行ってみたのですが、わからなかった…)
西側、反対側も見てみます。
ムムム、もちろん井関池の観察も楽しいのですが、この水が満ちた井関池を見ていると、もしかして豊稔池ダムの放水が終わってしまうのでは、という不安が頭によぎります。(まあ、そんなにすぐにというないのだけれど、何となく)
ほとんどの方が見過ごしてしまう井関池ですが、もし通ることがあったら、眺めてみてください。
豊稔池ダム放水(中樋)
井関池を眺めてから、山道を行き、豊稔池ダムに到着です。
やはりこの日も人は少なかったのですが、県道の山道にて、自転車の2人組を見かけました。
結構自転車で上るのに傾斜もあります。
若い方で、風はあるけれど暑い中来られていたのですね。
そのグループとは別の方で、県外ナンバーの男性二人組。
お仕事の途中なのか、さっと見られて車に乗り、帰られていました。
県道沿いのトイレのある駐車場に一度車を停めて降ります。
耳をすませば、水の音がしますので、よかった、まだ放水が続いているようです。
そして今回は、豊稔池ダムファン倶楽部さんがフェイスブックにて投稿されていたように、中樋からも放水されていました。
いやあ、何だか嬉しい気持ちで、しばらくここから眺めていてもよいくらい。
前回は石がそのまま見えていた場所には、水が青さを伴って流れています。
手間と奥から水の音が立体的に響いています。
しかし、やはり他の場所も見たいので、上部の池の方へ歩いて行きます。
これも僕ははじめて見る光景でしたが、豊稔池ダムの水位が放水によって随分と下がっていて、堤体の上部裏側の白い部分が見えています。
そして上樋の取水口なのだと思いますが、ゴオゴオという低い唸り声のような音を立てて水を吸い込んでいます。
やはり豊稔池は生きているのでは、と思うような雰囲気でした。
下流の井関池に水が行った分、豊稔池は減るのは考えてみれば当たり前だけれど、昔これを考えた人たちはやはりすごいなあという気持ちになります。
しかし、よくよく見ると、上樋の放水量は、数日前と比べてやや少ない気がします。
勢いよくザアァという流れではなく、シャーという感じ。
これはちょっと急がねば、と車で下の駐車場へ。
急いで遊水公園へ向かいます。
夏景色の豊稔池ダム
前回の訪問も天気は悪くなかったのですが、ちょっとぼんやり雲のある青空でした。
この日は風が強かったので、くっきりとした青空と雲が早く移動していきました。
ちょうど台風が発生していたタイミングだったので、風が吹き始めたのかもしれませんね。
それを考えると、豊稔池ダムのゆる抜きや放水は8月の下旬がぎりぎりのタイミングなのでしょうね。梅雨が短く雨が少なければ早めに、梅雨が長く雨が多ければ遅めに、ということなのかもしれません。2020年は雨が多く、梅雨明けが遅かったものの、その後に全く雨が降らなかったので、このタイミングとなったのでしょうね。(この辺は僕が個人的に勝手に推測しているので、全く違うかもしれませんが…)
豊稔池ダム、2020年のゆる抜きのような放水です。
豊稔池堰堤(ほうねんいけえんてい)
豊稔池堰堤(ほうねんいけえんてい) – 観音寺市ホームページより引用
~我が国最初期のマルチプルアーチ式コンクリート造堰堤~
阿讃山脈を分け入る柞田川上流に「豊稔池堰堤」があります。
長い年月の風雨にさらされた堰堤は、まるで中世ヨーロッパの古城を思わせる威容と風格があり、四季折々に見事な景観を見せてくれます。
堤長145.5m、堤高30.4mのコンクリート造溜池堰堤で、両端部を重力式、中央部が5個のアーチと6個の扶壁(バットレス)からなるマルチプルアーチ式で、その先駆的かつ希少な構造形式は農業土木史上価値が高く、また、昭和前期における堰堤建設の技術的達成度を示しており、平成18年12月19日に重要文化財(建造物)に指定されました。
大正15年に起工、昭和4年11月の竣工後、80年近く経過した今でも約500haの農地の水がめとして活躍しています。
建設に際してはすべて地元農家の出役で工事が行われ、約3年8カ月の間、無事故で完成したといわれています。
また、当初、池の名称は「田野々池」でありましたが、昭和4年5月に三土忠造大蔵大臣が現地視察をした際に「豊稔池」と命名されました。
どなたかは存じ上げませんが、自転車のお二人も無事に到着された模様でよかったです。
しばらく見学された後、再び自転車にて帰られていました。
もしかしたら、もっと豪快な放水を期待されていたのかもしれません。
熱い中で、ここまで来るのはとても大変だったと思いますが、中樋と上樋方放水するゆる抜きのような時に来られていて、これはとても幸運なことであったということをこの場でお伝えしたいと思います。
さて、放水ですが、上樋の方は上から見た通り、少し水量が減っていました。写真を並べて比較してみますね。
どちらも上樋からの放水ですが、やはり前回の放水の方が迫力がありました。
しかし、今回の水量では、下の石積みが空けていて、流れが滝のようにも見えるので、これはこれで、良いものです。
続けて中樋の方に目を移してみます。
さすがにこの日は数組の方が見学されていたので、静かにしていましたが、やはり心の中では嬉しさがこみ上げてきます。
豊稔池のゆる抜き、そう、これがゆる抜きです。
昨年(2019年)は雨で、霧のように舞いがる、すごい水飛沫でした。
ちょっと思い付きですが、やはりこの水飛沫の音がゆる抜きを表す一つの要素となっています。
正面からだけでなく、両サイドからステレオと言うか立体的という感じに音がします。
ううむ、日本の音風景百選には、満濃池が入っていますが、豊稔池のゆる抜きも良いんじゃないかと思います。
今年2020年はそうでもありませんでした。なるほど、上樋と中樋の流量を調節して、ゆる抜きとは異なった感じにしているのでしょうね。
8/24 8/27
例年のゆる抜きの時のような勢いはないものの、やはり中樋から水が出ていて、翡翠のような色になっているのは、見ていてとても気持ちがよいところです。
ちょっと怖いですが、頑張って石段の上へ行ってみますね。
実はこの場所から見るのは、僕ははじめてです。
ゴオォと唸るように水が流れていて、やはりちょっとおっかない。
足元を見ると、小さなエビがいました。(別に見なくてもいいけれど、何となく見てしまう。小さいエビ…)
上を見上げると、煽られて転びそうになる場合には、無理をなさらないでください。
水飛沫がないわけではないのですが、風が吹いていたので、辺りはとても涼しく感じます。
青空、雲、黒の堤体に水の流れ、木々の緑。
豊稔池のゆる抜きは、やはり、気持ちがいいものです。
豊稔池ダム上へ
しばらく見た後、芝生広場を離れ、上部へ移動します。
遊水公園には、豊稔池旧土砂吐樋門が設置されていますので、ちょっと見ていきます。
その隣には旧中樋取水口がありました。
どうやって水を開け閉めするのか、興味がありましたら覗いてみてください。
(僕はあんまりない…)
少し登ったところを脇に入ると、火薬庫跡があります。
時期によってここには虫がたくさんいるので、ご注意ください。
階段は石段のようになっていて、綺麗に整備されているので、上りやすいです。
もちろん何度も来る方は、上がっても何もないから、という感じで上らないこともあるかもしれませんが、はじめて来る方は、是非上ってみてください。
前回に比べて、やはり訪れる方が増えていたかな、と思います。
皆さんいろいろ情報を見て、来られているのでしょうね。
この石段を上がれば上部の広場に到着です。
奥には豊稔池碑、手前は水神社。
二回目になりますが、今年も放水を見せてくれてありがとうございます、と水神社にお参りしました。
※この水神社について、翌年2021年2月の天水分あめのみくまりに行き、詳しく知ることができました。よろしければご覧になってみてください。
こちらも水位が下がり、上の方が良く見えます。
そして、その下の方から、低い音が響いてきていましたので、きっと中樋の取水口があるのでしょうね。
振り返ってみると、山々の間に水を湛えた豊稔池。
数日の放水により、全体の水位が下がっていました。
その分下流の井関池の水位が上がっていましたが、やはりこちらの方が広いのでしょうかね。
こうした豊稔池を見るのもはじめてだったので、やはり来てよかったです。
二回に渡って訪れた豊稔池ダムでしたが、それぞれに違いがあって、楽しめました。
この後上樋の水が止まり、その後中樋からの放水も止まりました。
たまたま豊稔池ダムを訪れ、放水していたら、もしかして、それはとても幸運なことかもしれません。
しかし、毎年夏の日、香川を代表するため池の一つ豊稔池では、ゆる抜きという放水が行われますので、是非、また来年、楽しみに待っていてください。
僕も来年は、無事に行われることを、心から願っています。
それでは、今日はこの辺で。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。