豊稔池のゆる抜き (2021年8月)のことを書いておこうと思います。
「え?ゆる抜きしてたの?」
香川県や観音寺市にお住いの方は、よくご存知かと思いますが、行事としての豊稔池の2021年、令和3年のゆる抜きは、昨年に引き続き中止となりました。
※追記2024年8月7日
2024年、令和6年のゆる抜きの日程が決まりました!
【2024.8.8】豊稔池のゆる抜き日程について
観音寺市大野原町の夏の風物詩『豊稔池のゆる抜き』の日程が決まりました。今年は 8月8日(木)午前9時~ と、土地改良区から連絡がありました。
中樋からの毎秒4トンの放水は、圧巻。
その水しぶきが自然のクーラーとなって、涼も感じられます。
上樋からも放水するので、向かって右側には、水の白い絨毯も見られます。豊稔池ゆる抜きについて – 観音寺市ホームページより引用
豊稔池ゆる抜きについて 掲載日:2021年7月9日更新
豊稔池ゆる抜きについて – 観音寺市ホームページより引用
例年、7月下旬から8月上旬にかけて行っております豊稔池の「ゆる抜き行事」につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、今年度については、「中止」します。
※追記2022年7月15日(金) さて、毎年その雨量や貯水量により日程の変わる豊稔池のゆる抜きですが、令和4年(2022年)は、7月15日(金)の午前6時!から上樋の放水が始まったと豊稔池ダムファン倶楽部さんのフェイスブックに投稿がありました。 いつまでかははっきりしませんが、お知らせまで。 ※追記終わり ※追記2022年7月16日(土) 張り切って現地に行ってみましたが、終わっていました…。 もう一回あるでしょうか… ※追記終わり
※追記2023年8月
令和5年度も台風で水位が十分にある為中止となりました。
例年、7月下旬から8月上旬にかけて行っております豊稔池の「ゆる抜き行事」につきましては、度重なる台風の襲来の影響により周辺の池の水位が十分に保たれているため、今年度については行われません。
※追記終わり
もうこの記事を書いている時点でリンクも切れてしまいましたが、7月の上旬には早々に中止が発表されました。
これまでは、観音寺観光協会さんのHP上で日程や中止などが公表されることが多かったのですが、今年は観音寺市のHP上で公表されていました。
このお知らせはもちろん残念だったのですが、ゆる抜きの放水は、「行事」にて行うだけではなく、「利水」という実用的な部分も兼ね備えております。
わかりやすく言うと「下流のため池の水がなくなったら、放水しなければいけない」ということです。
昨年も8月下旬に放水していたから、また今年もその頃かな、と豊稔池ダムファン倶楽部さんの投稿をチェックし続けます。
あんまり詳しく書くと、意識されてしまうので、簡単に書いておきますね。
7/16以降、投稿の中で下流の「井関池」への言及が増える傾向がありました。
8/7の写真を見ても、この時点では、ゆる抜きするほど井関池の水位が下がっていないのでは、と思っていました。
しかし、8/10の夕方に見にいくと、「短い間ですが、下流の井関池へ放流」とのこと。投稿を見たのが17時頃だったので、そこから向かうと19時前。
(FB投稿日時はずれていることがあるので注意が必要です)
まだ陽があるけれど、日没に近い厳しいタイミングです。
しかし、放水を開始して、その日のうちに終わりということは、余程のことがない限りないだろうから、翌日朝に行くことにしました。
少し長い前置きとなりましたが、そんな感じで、2021年の豊稔池ダムのゆる抜きを見に行ったお話です。
豊稔池ダムや、ゆる抜きのことなんかにご興味のある方の参考になれば、幸いです。
豊稔池ダムの場所
毎年(毎回か…)同じようなことを書いていて、飽きないのだろうか、と僕自身も思うことがあるのですが、ゆる抜きのことに関してはそういう気持ちになったりはしません。
例えば毎日そのことを書け、と言われれば、3日位で飽きてしまうけれど、一年に一度、ゆる抜きを書くことは、何となくこの時期の楽しみという感じになっています。
これはなかなか他のことではないことでもありまして、この一年の中では最も書きたい、書きやすい内容です。
(他が書きにくい、とううことではなくて、ゆる抜きがとても書きやすいという意味です)
その一つの理由は書きたいことと、パターンが決まっているからかもしれません。
パターン通りにすると、まずは豊稔池ダム(豊稔池堰堤)の場所から見ていきます。
豊稔池は香川県の西の端、そして愛媛県や徳島県の県境に近い場所にあります。
山の奥にあるこの場所もまた、豊稔池に惹かれる理由の一つなのかもしれません。
高松からは国道32号線を行き、琴平から国道377号、県道241号と行くのですが、何と通行止めとなっていまして、パトカーが停まっていました。
事故なのだろうか、と思いながら迂回します。
もう一度国道に出て、萩原交差点に向かう途中、僕は見てしまった…。
最初は人影が見えたので、田んぼの農家の方かな、と思ったのですが、違いました。
驚いたのは、回り道、迂回路の道沿いでカメラを構えられていたこと。
もう一つは8月のお盆前、畑の中でカメラを構えていたこと。
僕は香川では比較的厳しめにいろいろするべきだ、と思っているけれど、これに効果があるのでしょうか…。
もう田んぼの中の方(若い方だった)には職務とは言え、可哀そうな気持ちに…。
確かに香川は日本有数の事故多発県で、ここが速度40km制限の直進の県道だけれど、この活動で事故が減らせるのかな、と疑問しかありません。(悪いけど、たぶん減らない)
これは、自分が来年まで覚えているために書いておきますが、 豊稔池に行く方、この道を通られる方、この辺りの通行止めと直進の道には、どうぞご注意ください。
萩原交差点と井関池
そして、もう一つ関係してくるのが、萩原交差点。
角にコンビニがあるので、そこで飲み物を買って行きます。
豊稔池には自販機がないので、ここで買っておくことをお勧めします。
そしてこの交差点で僕は毎年カメラを構えます。
意識しなければいいのだけれど、道沿いに三脚立てて、カメラを構えると、トラックの運転手さんからの熱い視線を感じます…。
まあ、特に何も悪いことをしているわけではないので、堂々としていればいいだけですが。
僕は毎回動画のオープニングで使用しているほど気に入っている、とても雄大で良い風景なのですが、誰も気に留めることなく通り過ぎていきます。
晴れていると、雲辺寺ロープウェイ山頂駅が見えるのかもしれませんが、この日は曇り。
しかし、緑の稲穂が風に揺れ、実りを感じさせるいい匂いがしていました。
ああ、ゆる抜きだなあ、という感じ。
五郷の駐在所の前に、井関池。
(いや、もし先ほどの若い方が 五郷の駐在所の方だったら、と思うと、余計に同情してしまうのですよ…。)
先日の投稿の通り、僕の見た感じではほぼ満水でした。
ムムム、これはいけない、ゆる抜き終わってしまうかも、と毎回ここで思います。
(いつも大丈夫ではあるけれど)
僕が見た中では、2016年の井関池が一番底が見えていて、どうしてもその当時と比べてしまいます。
先に井関池を見ると慌ててしまう、しかしどんな様子か見てみたい、そんな気持ちでここを訪れます。
逸る気持ちを抑えつつ、山道へ入って行きます。
行事としての「ゆる抜き」がある時には、放水がはじまる時間に混雑しますが、行事中止の今年はほとんど車は見かけませんでした。
豊稔池ダムには駐車場が2つあります。
ゆる抜きの混雑時には路方に停めている方もいますが、そんな感じはありませんでした。
僕は普段ならダムの上の駐車場へ停め、下へ歩いて行くのですが、何となくゆる抜きが終わってしまったら嫌なので、今回は直接下の駐車場へ向かいました。
豊稔池のゆる抜き (放水)はいつ頃あるの?
近くで、水の流れる音がし始めると、目の前にダムが見えてきます、
すぐに音が大きくなり、辺りは水飛沫でひんやり。
よかった、間に合った!
自宅を9時前に出たので、到着したのは10時半すぎ。
午前中は放水があるのでは、と思っていたので、間に合いました。
豊稔池ダムから放たれた水により、柞田川の水流にも勢いがあります。
駐車場から川にかかる小さな橋、豊稔橋を超えると、霧のような水飛沫が舞っていました。
風に水の匂いがのって、緑の芝生に落ちていきます。
ああ、この感じ、他にはないこの感じ。
2021年、令和3年の豊稔池ゆる抜きです。
記事をお読みになっている方の中には、ゆる抜きがいつ頃行われているのか、ということにご興味のある方もいるかもしれません。
僕が訪れた範囲で(自分で確かめた範囲で)、書いておきますね。
2015年8月18日(火)10:00~
2016年8月9日(火)9:30~
2017年台風で井関池満水の為中止
2018年8月8日(水)10:00~
2019年8月27日(火)10:00~
2020年コロナで中止 8/24(月)上樋放水 8/25(火)中樋放水
2021年コロナで中止 8/10(火)
他の方のSNS投稿や動画などを見れば、それ以前もわかりますが、ゆる抜きは、概ねお盆の前後が多いです。
その他の余水吐からは、自然に放水されるので、誰にもその時期はわかりません。
しかし、僕が見た限りでは、台風や大雨の後は勢いよく放水していることが多いようです。(水位の低下するゆる抜き直後を除く)
山の中だし、土砂災害もあるので、僕はその時に見に行きたいとは思わないけれど、ゆる抜きか放水は、必ずこの夏の時期に行われます。
当たり前のことですが、田畑への灌漑の放水、そのための豊稔池ダムなので。
ゆる抜きは中止だから、人が少ないのは当たり前なのですが、やはり一組、二組というのは寂しいです。
上樋から、大きな音を立てて放たれた水が、白い飛沫を上げて滝のような階段を流れていきます。
この白い滝のような光景も、ゆる抜きならでは。
おそらくあの飛沫が今僕のいるところまで運ばれてくるのでしょうね。
別に富岳を使用しなくても、ここならばマイクロ飛沫もすぐに落ちてしまうと推測できるので、感染の心配は少ないと思うのですが、いかがでしょうか…。
満濃池のゆる抜きでも思ったのですが、 屋外でもフェスのように声を出すわけでもなく、飲食もありません。
静かに「ダムからの放水を水飛沫を浴びながら眺める」という行事なので、感染リスクは低いのでは、と昨年に続き書いておくことにします。
是非来年は通常通りの開催をご検討ください。
豊稔池のゆる抜き 芝生広場にて
じりじりと堰堤に近づいて行きます。
すると、男性が一人、中樋に近づいていきます。
わあ、結構大きな音を立てて放水されていますが、近くに行って怖くないのでしょうか。
用心しながらも、慣れた感じで階段を上がられたので、もしかして、と思ったらやはり管理をされている方でした。
僕はこれまで何度も足を運んでいますが、豊稔池ダムを管理されている方にお目にかかるのは、はじめてです。
少しわかり難いですが、白いヘルメットの方が中樋の上に立って、作業をしておられます。
特に水流の勢いは変わらず、作業を終えて来られたので、思い切って話かけてみました。
「すみません、もう放水が止まりますか?」
「いや、中樋はもう少しこのまま。上樋は11時までの予定なんやけど…」
「わあ、そうですか。この後中樋だけになる?」
「うん、井関池はいっぱいやけど、その下の双子池にいくように」
お忙しいところ、教えてくださり、ありがとうございました。
僕の知らないことが、いくつもありました。
まずは、上樋が先に止まること。
しかも聞いてから10分後、11時に放水を止めるということです。
そして、僕は井関池ばかりに注目していたけれど、そのさらに下流の双子池を満たすまで、中樋からの放水は続くこと。
思い切って尋ねてみてよかったです。
中樋の前で、しばらく写真を撮りたいと思っていましたが、予定を変更です。
止まる前に、と上樋の前に移動します。
なかなか写真では、全体の雰囲気をお伝えし難いところですが、白くなっているのは水飛沫です。
いつも水のない時には下りて行けるところも、ゆる抜き時には水が音を立てて流れていきます。
上樋から放水が止まる前に、と再び堰堤の脇へ。
澄み渡るような夏の青空、という感じではなかったのですが 、ここからゆる抜きを眺めていると、見られて良かった、来られてよかった、と思います。
ここから写真を撮っていると、一組の親子が芝生広場に来られました。
ちょうど夏休みの時期だから、お子さんも一緒にきたのでしょうね。
どこの誰なのかは存じませんが、白い日傘。
おお、これは、見たことがある。
Woman with a Parasol – Madame Monet and Her Son
Claude Monet, 1875 Huile sur toile, 100 x 81 cm
Washington, National gallery of art
もちろん僕はモネでもないし、目の前にいる方も誰かはわかりませんが、豊稔池のゆる抜きが、芝生広場で見せてくれた絵画の様でした。
上に行く途中、躊躇ったのですが、伝えます。
「上からの放水は11時までだそうですよ」
「えー!そうなんですかぁ、○○、11時までだって!」
もう数分前だったので、見られて僕も幸運でした。
豊稔池のゆる抜き 上樋からの放水と終了
11時に止まる、というので、少し考えました。
このまま下から止まるのを見るか、上から見るのかですが、上から見てみたい、と思い車で上の駐車場へ移動しました。
11時のほんの数分前に上樋の傍に到着しました。
ちょうどこの写真を撮っていると、側道に軽トラが入ってきました。
この方が閉じる係の方なのでしょうか。
よくよく考えてみると、ゆる抜きの終わりって、見たことないですよね。
始まりは「この日時に開始です」というのがあるから、その時間に行けばよいのだけれど、関係者以外は閉まる時間はわかりません。
なので立ち合いにくいですよね。
そして、閉じるところなんて、ほとんどの方が興味がないというのもあるかもしれません。
ごおと音を立てながら流れ落ちる水を止めるのは、結構大変な作業では、と見守ります。
持ってきたハンドルようなものを付け、ぐるぐる回し始めました。
ムムム、なかなか屈強な水門の門番さん、という雰囲気です。
すると、次第に水の量が減っていき、辺りに響いていた音もやみました。
いやあ、はじめて見ましたが、これはすごい…。
こんな感じでゆる抜きは終わるのですね。
戻られたところで、少しお話しました。
「はじめて閉めるの見て、感動しました!回したハンドルは重いのですか」
「いやあ、こっちの方はそうでもないです」
「中樋はもう少し後で閉めるのですか」
「うん、今日と明日くらいか…、双子池までと言うとるからね」
なるほど、ありがとうございました。
やはり、双子池まで水を流すのですね。
双子池、探してみると、下流の運動公園の傍にその名の池がありました。
双子池、確かに観音寺にあるのですが、彼らの言う「双子池」がこれかどうかはわかりません。
ただ、そう言っていた、ということです。
※追記
当時は「双子池」と聞いた気がするのですが、その後井関池の隣に「双葉池」という池の名前を見つけました。
「双子池」は少し遠いと思っていたので、もしかしたら「双葉池」のことを言っていたのかもっしれません。
※追記終わり
満濃池のゆる抜きでも思ったのですが、「ゆる抜き開始のハンドルを回すイベント」とか「ゆる抜きを終える為のハンドルを回すイベント」なんかをふるさと納税の返礼品にしたらどうだろうか、と思い付きですが、書いておきます。
資格とか いるなら係の方が横に付き添って、鐘を鳴らすとか。
これは、夏を告げる鐘で、なかなか名誉なことですよ、というのはどうでしょうか。
豊稔池の水神社
もうこのまま帰ってもよいのですが、僕には、一つしておかなければいけないことがあるように思えて、もう一度下の駐車場へ。
誰もいなくなった芝生広場には、もう先ほどのような大きな音や飛沫はありません。
音は中樋の一か所から、という感じになりました。
滝のようにあふれ出していた水が、ちょろちょろという感じに変わっています。
ゆる抜きが終わったのだなあという感じ。
脇にある石碑の裏から山道の階段に入ります。
ちょうど堤体の左手側には階段があり、誰でも上っていけるようになっています。
(もったいないことに、ほとんどの方が訪れないのですが)
香川県の人間国宝、磯井如真氏の手による豊稔池碑。
天水分で知った、豊稔池築堤に尽力された加地茂治郎さんのお名前を確認します。
そして、水神社にお参りします。
「今年も素晴らしいゆる抜きをみさせてくれて、ありがとうございました」
振り返ると、豊稔池が見えました。
水位も幾分下がっているように見えました。
また次の来訪者がおられました。
帰り道、どうして何度も訪れるほど豊稔池のゆる抜きが好きなのだろうか、と考えてみました。
まずは、讃岐を代表する夏景色を見られるところ。
水飛沫、流れる音なんかも好きです。
そして、貴重な文化財でありながら、現在も実用的に機能しているところや、地域の文化や歴史に大きな影響を与えているところも気に入っています。
香川や観音寺を代表する観光地であることも。
まあ、挙げればきりがないのですが、僕はまた来年も行けたらいいなあと思います。
そして、通常通りに行えるといいですね。
これからは紅葉が綺麗だろうから、お近くに来られた際には、是非立ち寄ってみてください。
それでは、今日はこの辺で。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。