今回は 四谷シモン人形館淡翁荘 について書いてみたいと思います。
普段は、全然そんなことは考えず、撮ってきた写真を見ながら、思いつくままに書いていくのですが、今回はちょっと緊張しながら書いていきます。
まあ、緊張と言ったって、どうしようもないということではなくて、なるべく間違いがないように、という程度のことなのだけれど。
どうやって行ったか、何があって、何を見ることができるのか、なかなか全てをお伝えすることは難しいのですが、ああ、これは香川の中でも不思議な場所の一つだ、ということを知っていただければ幸いです。
鎌田共済会郷土博物館 四谷シモン人形館淡翁荘 の場所
四谷シモン人形館は、 鎌田醤油さんの蔵元がある「鎌田ミュージアム KAMADA MUSEUM」の一角にあります。
もちろん検索すればすぐに出てくるし、場所がわからない、ということはないのですが、少し見ておきますね。
香川県坂出市の中心部、JR坂出駅から徒歩10分ほどの場所にあります。
僕は瀬戸大橋記念公園の東山魁夷せとうち美術館から車で行ったので、その道のりは約10分。
しんすい園さんで中華そばを食べてから訪れたので、駐車場は坂出人工土地の地下に停めました。
専用駐車場があることを僕は知らなかったのですが、現地へ行ってみたらありました。
もし四谷シモン人形館に車で訪れ駐車場に停めようという方は、南側からまわりこむ必要があります。
「香風園」という庭園公園があり(これも鎌田醤油の敷地内)、その通りを東に曲がり、北側に左折、という場所です。
僕は商店街を歩きましたが、そうでなく、直接駐車場に来る方も多いだろうなあと思います。
なるべく初めての方でもわかるように、とは思いますが、何度地図で書いてもわかり難い場所です。
商店街から 四谷シモン人形館淡翁荘 へ
見ていたら、鎌田ミュージアム周辺のイラスト図があったので、それをお借りして見て行きますね。
地図の上が南(まあ仕方がないと言えば仕方がないが、地図の上が南問題何とかならないだろうか…)、僕が加えた「黄色い四角枠」のところが商店街のアーケード下です。
僕はしんすい園から歩いてきたので、その突き当りが、下の写真。
登 登録有形文化財の淡翁荘黒門です。
そこから東に向かうと、連なって左に昔ながらの家屋があります。
こちらはgoogleさんの画像ですが、こちらも登録有形文化財旧鎌田醤油本店なのだそうです。
その向かい側には、小さなステージがあって、広場のようになっていました。
坂出なんでも広場というのだそうで、子どもが遊んでいました。
ここが後からご紹介したいところでもあるので、この広場、少し覚えておいてください。
その角を右へ曲がると、醤油蔵の門があります。(なぜか写真は撮らなかった。きっと暑いから急いでいたのだと思います)
その奥に「讃岐醤油資料館」「四谷シモン人形館・淡翁荘」と書かれた案内板がありました。
なるほど、こちら側が入口になっていて、その前に専用の駐車場があるのですね。
振り返ると、目の前は川久米旅館さん。
僕は何度かここを訪ねたことがありますが、醤油蔵があることは知ってっていましたが、ここにミュージアムがあるなんて全く気が付きませんでした。
目的が違うと、見えないことってあるのだなあ、と思います。
しかし、わかりやすいところか、と言えば、そんなことはありません。
はじめて行くのであれば、なおのこと。
周辺はお年寄りや子ども歩いているところでもあるので、車で行かれる場合にはゆっくり行ってください。
四谷シモン人形館に到着です。
この建物自体も「淡翁荘主屋」として、登録有形文化財になっているのですね。
小沢剛 讃岐醤油資料館にて
中に入る前に、建物の写真を撮っていると、中から一組出て来られた方がおられました。
わあ、結構人が入っているのでしょうか。
もし誰も出て来なくても、大丈夫です。
素敵な歴史を感じる扉ですが、力まず開けてみて下さい。
受付には、先ほどお客さんを見送った女性がいました。
名前はわからないけれど、仮にK子さんとしておこうと思います。
「こんにちは、見学したいのですが…」
「いらっしゃいませ、こちらははじめてですか」
「はい、はじめてです」
「そうしましたらですね、こちらの建物が四谷シモン先生の人形館、その前の建物が小沢剛先生の讃岐醤油資料館になっておりまして、両方ご覧になる場合には、スタンプラリーがありまして、郷土資料館を巡っていただいた最後に直売所でプレゼントがあります」
大体、僕は長い説明でも一度で理解する方なので、そのチケットをK子さんにお願いすることにしました。
この感じ、どこかで、と思い出したら、丸亀本島の塩飽本島笠島街並み保存地区で吉田邸を案内していただいた時と似ています。
賑やかで早口な中讃丸亀、坂出の女性という感じです。
K子さんは慣れた口調で「先に醤油資料館を」と案内してくれました。
「こちらはもともと鎌田醤油の蔵があった建物で 登録有形文化財 となっております、改装して小沢先生の醤油画を展示しています。」
というような説明をしながら、戸を開けてれました。
わあ、中は昔の建物のつくりでした。
醤油蔵として使われていたと説明してくれました。
「正面の門のところにどうぞ」
と言われ、大きな木の門の方へ。
とても立派な戸ですが、ここから醤油づくり為、荷車などを出し入れしたのだそうです。
なるほど、大きくて立派なのはそのためですね。
そして、ここの向こう側が、ちょうど先ほど歩いて来た商店街になるのだそうです。
へえっと覗いてみると…、
おお、本当だ、先ほどの坂出なんでも広場が見えました。
なるほど、港から上がって来た荷を、そのまま南へまっすぐ運ぶと、ちょうどここに着くのですね。
一通り説明をすると、「ではご覧になられたら先ほどの受付で声かけてください」とK子さんは出て行かれました。
門の隣には和室が一部屋あり、醤油画の体験などができる用意がされているようです。
なるほど、醤油画って淡い感じになるのですね。
蔵の中の通路は人が一人通るほどの狭い場所なので、なかなか全体を紹介することができませんが、見ていきますね。
讃岐醤油資料館
これは後からそうだったのか、とパンフレットなどを見て知ったのですが、中世室という展示だそうです。
醤油は平安時代、弘法大師により中国から日本に伝来したと言われていますが、まもなく画材として優れているという発見があり、弘法大師あるいはその弟子たちにより醤油画の歴史が始まったとされています。
小沢剛 讃岐醤油画資料館 | 鎌田ミュージアム KAMADA MUSEUMの挨拶文より引用
なるほど、醤油画は弘法大師と縁があるのですね。
小沢剛氏、K子さんが東京芸大の先生だと言っていました。
ムムム、そういえば、どこかで名前を見聞きしたことがあるなあと思っていたら、瀬戸芸でした。
2013年の瀬戸芸では、当時休校していた男木の小中学校で昭和40年会。
社会科資料室というところがありました。(もう既に当時のガイドブックにしか載っていない。あんなに皆さん熱心に写真を撮っていたのに、一体どこへ行ったのか…)
瀬戸芸のガイドブックを頼りに2015年に直島を歩いた時に見た、スラグブッダ。
2016年の瀬戸芸でも男木島梅乃屋旅館で昭和40年会の展示がありました。
会田さんが制作されていた姿が強烈な印象で、よく覚えていますが、看板をよく見たら、鎌田醤油さん協賛されていたのですね。
中世室の奥には近代室。
醤油蔵の中にいるからなのか醤油画だからなのか、微かにお醤油の良い匂い。
1999年頃からあるというので、もう20年以上になるのですね。
奥さんも大体見た、と言うし、僕も少し暑くなってきたので、外に出ました。
四谷シモン人形館淡翁荘 の中へ
醤油画資料館を出て、受付で声をかける時には、どんな言葉がいいだろうか、と数歩歩くうちに考えました。
「すみません、戻りました…」
何もすみません、ということもないのですが、何か作業していたところだったら少し申し訳ない、という気持ちを込めました。
「はい、はい」とK子さんが出てきて、中の洋間に案内してくれました。
そして、これがよかったのですが、四谷シモン氏のことについて、少し説明してくれました。
演劇のことやジャズシンガーからとった名前の由来、人形作りや澁澤龍彦氏のことなど、5分ほどでしたがこの洋間で伺いました。
お話の物腰は柔らかいのだけれど、その合間の問いを拒むような、テンポのある説明でした。
こんな風に何度も説明しながら作り上げられた説明なのだと思います。
タイミングを見て「写真撮ってもいいですか?」と尋ねると「どうぞ」とのことでした。
訪れておいてこういうのもあれですが、僕は人形には詳しくないし、関心も薄いのですが、実物を目の前にすると、やはりすごいなあという気になりました。
「こちらの奥が玄関と和室になっています」とK子さんが案内を続けてくれました。
はじめて来たから、一つ一つに驚きながら移動します。
思ったことは、奥さんと二人で来てよかった、ということです。
もし観光などで来られて、慣れていない場所で、ここで一人だと、心細いかもしれません。
K子さんは、週末の日中ここにいるのだろうから、もう慣れているだろうけれど、豪邸で23体の人形とともに、人が訪れることのない冬の日曜を少し想像してしまいました。
「こちらが客間になっていまして、本来は正面玄関からお迎えしたお客様をここにお通していました。こちらには人形の展示はございません。」
なるほど、間違って入って行く方もいるのでしょうね。
個の向かい側が、入口になっていて、「淡翁荘黒門」登録有形文化財に通じていました。
玄関の写真を撮ろうかとも思ったのですが、やめておきます。
ない理由は、訪れてみたら、わかりますよ。
「では、金庫の中やお二階を、どうぞご覧になってください」
とK子さんは受付の方へ戻られて行きました。
淡翁荘1F
ふうと、少し自由な空気を吸い「順番に見て行く?」と奥さんに尋ねます。
「うん」と頷き、一つずつ見て行くことにしました。
似たような人形を何処かで見たことがあるようなと思っていたら、アニメでした。
イノセンス。
GHOST IN THE SHELLは2021年の秋にリマスター版が劇場公開されるのですね。
ちょうどこの時期に東京でオリンピックがあり、柔道のBGMで使用されていたのも、思い出したことに関係しているのかもしれません。
手で扉を開けねばならない仕掛けがあって、そういう時には、奥さんは「先に開けてよ」と言ってきます。まあ、仕方がないところ。
開けてみると、中には天使の人形などがあり、奥さんはここが一番よかったと言っていました。
怖いという感じではないのですが、ちょっと何があるのだろうかと、扉を開けるのには勇気が要りますよね。
淡翁荘2F
そして、二階へ上がって行こうと階段の下に来て、ここが僕にとって一番印象に残ったことろです。
ムムム、この階段、僕はここに来たことがあるのでは…。
高い天井、艶ややかに磨かれた手摺り、差し込む光に照らされる天使。
一度立ち止まり、思い出そうとするけれど、来たのははじめてです。
気のせいかと、やがて、上って行くと、ああ、そうだった甲村図書館、と思いました。
「海辺のカフカ」が発表された当時、まだこの人形館は出来ていないから、違うのだけれど、何となく思い出してしまいました。
人形とかけられた舞台の写真の前で、しばし立ち止まり、ソファに腰掛けてみます。
カーテンから漏れてくる夏の日差し、古い建物や調度品の匂い、音のない部屋と人形。
不思議と心地よく、そしてここは強く印象に残る場所でした。
窓の外から下を見ると(何だか覗き込むような、そんな気持ちになるけれど)、先ほどの黒門が見えました。
可愛らしい少女の人形と、
少年。
後に醤油の直売所でクリアファイルをいただいたのですが、この2体のにしました。
ここは、四谷シモン人形館が紹介される際に、よく使われている写真で、何で同じようにこの角度から撮っているのだろう、と思っていましたが、訪れて理解できました。
しかし、不思議なことにこの場所は非常に心地よかったです。
調度品が落ち着いたものであるのと、他に人がいなかったからかもしれません。
最初は中が見えることに驚いたのですが、慣れてくるとじっと見たくなります。
男の人形も同じで、最初はその大きさや置かれている場所に驚くのですが、すぐに慣れてきました。
さらにもう一つ奥の部屋がありました。
マントルピースの上には、鎌田醤油の方なのか、肖像が飾ってありました。
こちらの暖炉のマントルピースが、またなかなか凝っていて、面白かったです。
なかなかないですよね、こんな感じ。
鷲のような鳥類と、背に羽をもつ山羊が向かい合っているのでしょうか。
似たような天使像だな、と思って見ていましたが、後からパンフレットを見ると、一階の金庫の「目前の愛1」から、2、3となっているのですね。
この奥の部屋から窓の下を見ると、丁寧に整えられた庭園が見えます。
わあ、この奥が醤油の工場で、その間にこんな素敵なお庭があったのですね。
最後のひと部屋は扉が閉まっていて、また奥さんが「先にどうぞ」というので、先に入りました。
こちらのお部屋には、この他に3体の女性の人形があったのですが、僕の技術ではなかなか写真では紹介しきれませんでした。
ぜひ、ご自身で訪ねてご覧になってみてください。
はじめて訪れましたが、ここが香川で、坂出にいることをしばし忘れるほどでした。
時々瀬戸芸の作品の中にそういうのがあるけれど、時と場所を忘れさせてくれるような
本当に素敵な人形館でした。
四谷シモン人形館淡翁荘
・開 設 2004年7月6日
・〒762-0044 香川県坂出市本町1-1-24
・TEL 0877(45)0033
・FAX 0877(45)0035
1階は和室中心で 約141平方メートル (42.7坪) 2階は洋室中心で約125 平方メートル (37.8坪)。 施工は当時の 「合資会社清水組大阪 支店」。 従来は周辺の木造住宅と連続して使われていたが、 老朽化したため早川正夫建築設計事務所 (東京) の設計監理 1階管理部分約50平方メートル (15.2坪) を増築し、 独立 建物に改修したもの。
淡翁荘の館内案合図より引用
改修前。 木造住宅と連続していた。
鎌田共済会郷土博物館
帰り際、K子さんにお礼を言うと、
「この道をまっすぐ行って、郷土資料館に行ってスタンプもらってから直売所へ行ってください」
と念を押されました。
きっと、そのまま直売所に行ってしまう方が多いのでしょうね。
香風園を抜けて、歩いて行きましたが「暑い、暑い」と二人で言い合いました。
確かに7月の香川で午後の日向を歩くと暑いです。
郷土博物館に入ってみたけれど、さすがに先ほどの印象が強くて、上の空になってしまいました。
久米通賢の測量図などが展示されていましたが、写真NGだったのでしょうかね。
僕はこの建物では、何となく甲村図書館のイメージとはあわないなあ、と思っていました。
しかし、この奥の四谷シモン人形館淡翁荘の建物は、とてもよく似ているなと思います。